468.「★『移民史』は人数だけでなく。 ――もしくは、『亜米利加』の読み方・その2」

※神余くんの世界史あいらんど…河合塾世界史講師「神余秀樹」先生(吉崎の恩師)の“ちょっとdeepな”世界史をご紹介します。

「移民史」は人数だけでなく。

――もしくは、「亜米利加」の読み方・その2

 

(「1」からの続き)

GEGMUSスティール…、鉄鋼や自動車etc.が衰退してもGAFAmだかが出て来て産業界を牽引する国(超巨額の債務国ではあっても)。

このドラスティクな転換は、もはや横並び・安定志向のムラ社会が定着した日本には真似できないことのようです。昨年の温暖化ノーベル賞の真鍋教授も、青色発光ダイオードの中村さんも…、「頭脳流出」はますます…(今は最大の債権国ですが、これからマネーも流出?)。

聞けば、mRNA・ワクチンを開発したカリコさんは、かつて冷戦期に自由のない東欧・ハンガリーを離れ米国に移った。今、日本も含め自由世界はこれに救われている。「たまたま米国の研究者が開発した」のではなく、世界の才能が集まり開花する舞台が維持された当然の結果として。

 

■逆に、人材の流出する国

ユダヤ迫害(ポグロム)の激しい帝政ロシアから人材とマネーが離れたことが日露戦争の帰趨に大きく影響した(拙著『パノラマ世界史(下)』p.101でも軽く触れました)。しかし、その意味を、かつての日本人はあまり考えなかった。「大国ロシアに勝ったんだから米国にだって…」などと真珠湾に突入し、壊滅した。

ウクライナ侵攻の現在、ロシアからの人・技術・マネーの流出が続いているらしい。(そういえば、大革命期のフランスからも同じくキャピタル・フライトが生じていたが)。

 

■結論:世界史、学ぼう

ソ連崩壊でひとり勝ちのアメリカを見て「気に入らん」人もいますね。「単独行動主義」を問題視する人もたくさんいます。「いつまでもアメリカの時代じゃない」との願望も含め。「アメリカ覇権の終焉」を指摘する本は今までも書店に山のように。70年代頃からすでに、かとも思いますが。

さて、複眼思考で。米国の国力は「たまたま広大で豊かな国土」だったからではない。

 

さて、プーチン君と習×平さん(×は検索対策。今は)、世界史の勉強が足りないのです。

連日ミサイル乱射の北の某国も含め、今や「ならず者連合」「テロ支援国家」のような国と、かつて「社会主義革命!」を標榜した(一部、今も)国と、その顔ぶれはほぼ一致する

その関係性は偶然ではないはずです。かつては日本でも彼らを熱く支持する人も多かった。さて、なぜでしょうか

知識」より「思考力」を問う良問、でしょ。

世界史のできない指導者は、こぶし振り上げ、あとで悔やむ。何より国民を不幸にする。

 

その点、“愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ”と言いきったビスマルクさんは凄かったかも(全統ナントカ模試なら偏差値80以上?)。

 

★この話、Anglo-Saxon覇権について。英国の“ウィンブルドン現象”も含め、またの機会に。

 

――――以上、2022年5月15日、記


〈神余秀樹先生プロフィール〉

 1959年、愛媛県に生まれる。広島大学文学部史学科卒。民間企業勤務などを経て受験屋業界の“情報職人”となる。あふれる情報の山に隠れた“底の堅い動き”。“離れて見ればよく見える”。さらに“常識から疑え”。そんな点も世界史のすごみかと思う。

 目標は「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」。学校法人河合塾世界史講師。

【著書】

『神余のパノラマ世界史(上・下)』(学研プラス、2010初版・2015改訂版)

『世界史×文化史集中講義12』(旺文社、2009)

『超基礎・神余秀樹の世界史教室』(旺文社、2018)